このページでは、例年どれくらい内定取り消しが行われているのか、また内定の取り消しが法律上どのような扱いを受けるのかなどを判例を示しながら紹介しています。
また、内定取り消しの相談先として最も効果的と言われている弁護士へ依頼した場合の事例や依頼にかかる着手金や成果報酬なども紹介しています。
内定取り消しにおいての実態とは
内定取り消しについての現状を知ろう
新卒者の内定取り消し数の推移
例年数十件程度の内定が取り消されていますが、令和2年卒業から新型コロナウイルスの影響による内定取り消しが急増しています。
実際に令和2年は卒業者の内定取り消し211件で、これは東日本大震災があった平成23年卒業者の内定取り消し598件以来の200件超えの年となっています。
なお、新型コロナウイルスの影響による内定取り消し件数は令和6年時点ではほとんど0になっており、内定取り消し件数全体も例年通りとなっています。
内定取り消しを行った事業者のうち厚生労働大臣が定める一定の条件を満たすものは、制裁として事業者名が公表されます。
内定取り消しとなる理由
- 経歴を詐称した
- 業務に支障をきたすほどの病気や怪我を負った
- 学校を卒業できなかった
- 犯罪や不適切な言動を行った
- 企業の業績が悪化した
内定取り消しは実質「解雇」と同じ扱いとなるので、客観的に合理的理由があり社会通念上相当であると認められる場合は内定取り消しも可能です。
ですが、上記のどれかに少しでも当てはまっていれば良いというわけではなく、「経歴詐称により明らかに業務に支障が出ることが予想される」「疫病の突発的な大流行で急遽業績が悪化した」など正当な理由でなければ不当解雇と同じであると言えます。
内定取り消しに関する判例
大日本印刷採用内定取消事件(昭和54年7月20日)
【訴訟内容】
大学卒業予定者が内定の誓約書を提出したのち内定を取り消された。その取り消しは解約権の乱用にあたるとして、企業に対し従業員としての地位確認(=労働契約の成立)等を求めたもの。
【裁判結果】
最高裁は、解約権を留保した就労始期付労働契約の成立を認め、内定の取り消しは解約権の濫用にあたるとした。
日本電信電話公社事件(昭和55年5月30日)
【訴訟内容】
採用通知を受けた人物が公安条例違反の現行犯で逮捕され起訴猶予処分を受け、そのことを理由とする採用内定取り消しの有効性を争ったもの。
【裁判結果】
大阪高裁は、違法行為の判明にともない留保解約権に基づき採用内定を取り消すことは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認でき、解約権の行使は有効であるとした。
内定取り消しにおいての相談先について
内定取り消しについて悩んでいるときには、自分だけで抱え込まず第三者に相談をしてみるのも良いでしょう。第三者の考えを聞くことで、より良い解決につながる場合もあります。
弁護士への相談
内定取り消しについて弁護士ができること
内定取り消しの正当性があるか判断してもらえる
内定取り消しは実質「解雇」と同じため労働契約法により濫用を制限されています。弁護士であれば過去の判例などと照らし合わせてその内定取り消しに正当性があるのかを判断してくれます。
損害賠償請求の手続きをしてもらえる
内定取り消しの裁判においては企業側に損害賠償請求を行うことも可能です。弁護士であれば裁判をする際はもちろん、会社との交渉や裁判までの手続きなども代行してくれます。
弁護士へ無料相談することはできる?
近年は、無料で相談できる弁護士事務所も増えており、一定数の弁護士事務所で無料相談が可能です。あくまでもできるのは、相談で着手してもらう場合は有料となります。また、無料相談も「初回30分のみ」など制限を設けていることが多いです。
「弁護士保険ミカタ」、「ベンナビ弁護士保険」、「弁護士保険コモン+」などの弁護士保険に加入すると、付帯サービスとして、弁護士への無料相談サービスが備わっており、より相談しやすくなっています。
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内定取り消しについて弁護士費用を相手に請求できる?
弁護士費用については勝訴・敗訴に関係なく原則として相手に請求することは出来ません。
敗訴した側が弁護士費用を支払うのは一見正しく感じられますが、「もし負けたら相手の弁護士費用も支払わないといけないのなら…」と訴える側が訴訟を思いとどまってしまう可能性があります。
そのため、法律で定められた訴訟費用については敗訴側の負担が認められる一方で、弁護士費用については原則自己負担となっています。
なお、不法行為があった場合の損害賠償の訴訟においては相手側に弁護士費用も請求出来る場合があります。
ですがその場合も弁護士費用全額を請求できるわけではなく、損害賠償額の一割程度(慰謝料として100万円が認めれれたら10万円分)を限度に認められることになります。
弁護士以外の相談先
ここで、紹介する相談先は無料で相談することができるため、弁護士に相談する前の相談先としてもおすすめです。
総合労働相談コーナー
各都道府県労働局・全国の労働基準監督署内に設置されており、あらゆる労働問題を専門の相談員が面談か電話で対応してくれます。
法テラス
法務省が所管する独立行政法人で、365日24時間対応してもらうことができます。条件を満たせば、弁護士への依頼費用を立て替えてもらうこともできます。
内定取り消しについて相談するならどっちがいい?【弁護士と労働基準監督署】
弁護士
こんなときは弁護士に相談しよう
個人的な労働に関する問題を解決したい
(ex.慰謝料を請求したい)
弁護士への相談 特徴
費用は発生するが積極的に調査・解決に動いてくれる
弁護士に相談する場合の流れ
- 弁護士へ相談
- 弁護士が必要な証拠を集める
- 弁護士が会社に対して損害賠償を請求
労働基準監督署
こんなときは労基に相談しよう
会社の法令違反を是正させたい
労基への相談 特徴
実際に会社に立ち入り調査や是正勧告を行ってくれる
労基に相談する場合の流れ
- 労働基準監督署へ相談
- 労働基準監督署が会社に立ち入り調査や事情聴取を行う
- 法令違反があれば会社に対して是正勧告や改善指導を行う
参照:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/131227-1.pdf
内定取り消しについて弁護士に相談して依頼する際の流れ
会社側に対して訴える内容を決める
内定取り消しについて会社側に訴えることが出来ること
- 内定取り消しの撤回
- 内定取り消しに対する補償や損害賠償
内定取り消しの証拠集め
弁護士と連携しながら内定取り消しの違法性立証のための証拠集めを行います。
具体例
- 内定取り消し理由の確認
会社に対して内定取り消し理由を確認(やり取りを文面やボイスレコーダーで保存しておくと良いでしょう) - 客観的証拠の収集
内定や内定取り消しに関するやり取りをしたメールの文面、内定通知書や誓約書等の確認
内容証明郵便の送付
内定取り消しを不服とする内容証明郵便は自身でも送付することはできますが、弁護士に送付してもらうことで相手にこちら側の真剣度を伝えたり、心理的なプレッシャーをかけたりすることができます。
内容証明郵便は、「いつ いかなる内容の文書を誰から誰宛てに差し出されたか」を郵便局が証明してくれるサービスです。訴訟など法的措置を行う際の証拠の一つとして活用することができます。
会社と示談交渉および民事調停を行う
示談交渉の内容の例
- 内定取り消しの撤回
- 損害賠償の計算方法の調整
民事調停が行われるケース
- 示談交渉で解決しない場合
- 譲歩しながら和解の道を目指す場合
民事訴訟を行う(民事調停で解決しない場合)
民事調停で解決しない場合は、民事訴訟を起こします。
また、内定取り消しであっても事業主と労働者の労働関係のトラブルとみなされるため、労働関係のトラブル解決に特化した裁判所の紛争解決制度である「労働審判」を活用することも可能です。
労働審判は民事訴訟と比べて申立から解決までの期間が短いのが大きな特徴です。
民事訴訟では、裁判官が双方の言い分を聞きながら証拠を調べ判決を言い渡します。加害者側が敗訴した場合は、基本的に損害賠償の請求額を支払わなければなりません。
【内定取り消し】弁護士へ相談する場合の費用
- 相談料:1時間あたり5,000~10,000円(無料相談の事務所あり)
- 着手金:10万円~30万円程度
- 成功報酬:獲得金額の20%程度
内定取り消しに関連するついてよくある質問
内定取り消しになる不適切な言動とは?
その言動が違法行為に繋がったり、その言動によって著しく内定している企業のイメージを損なったりする場合は、それらの言動を理由に内定を取り消される可能性はあります。
内定辞退と内定取り消しの違いは?
内定辞退は内定者側が企業に対して内定の辞退を申し入れるものです。内定の取り消しと違って基本的には違法性はありません。
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まとめ:内定取り消しで弁護士へ相談する場合の費用
この記事のまとめはこちらです。
- 例年数十件程度の内定が取り消されているが、東日本大震災や新型コロナウイルスの蔓延といった社会全体に大きな影響を及ぼす出来事があると内定の取り消しは急増する傾向がある。
- 内定取り消しの相談先としては「総合労働相談センター」「労働基準監督署」「法テラス」などが存在するが、個人的な労働問題を迅速に解決するには「弁護士への相談」が効果的。
- 内定取り消しで弁護士へ相談する場合の費用は、「相談料:1時間あたり5,000~10,000円」、「着手金:10万円~30万円程度」、「成功報酬:獲得金額の20%程度」程度になることが多い。
弁護士への相談を検討している場合は、弁護士保険の加入がおすすめです。下記から、弁護士保険の比較することができます。