不動産を相続した場合などは物理的に分割することが難しいために複数人で共有所持しているケースが珍しくありません。
ですが不動産を共同所有していると売却や改修の際に共有者全員の同意を得る必要があり扱いが非常に不便になります。
このページでは共同所有している資産を分割するための共有物分割請求について詳しく解説しています。
他にも共有物分割請求を行う際の流れや、請求に際して弁護士に依頼した場合の費用などについてもまとめています。
共有物分割請求とは
共有物分割請求とは、不動産などの共有している資産を単独者の所有物とするために分割するための請求を指します。
分割については、共有物そのものを分割する「現物分割」が原則ですが、共有物を競売にかけて売却代金を共有者で分ける「代金分割(=換価分割)」や、権利を譲渡する代わりに対価を支払う「価格賠償」があります。
共有物分割請求にかかる費用
共有物分割請求の段階では、共有者全員で分割協議を行うだけなので費用は必ずしも発生しません。
共有物分割協議がまとまらず調停や裁判に発展すると、裁判費用や弁護士費用が発生する場合があります。
これらの費用以外にも、共有物の価値を把握するために不動産鑑定を命じられる場合もあります。
共有物分割請求の費用は誰が払う?
裁判を起こすための訴訟費用は原告が支払います。
印紙代と切手代で3~5万円程度になるのが一般的です。
裁判費用の他に、弁護士を雇った場合は各自で弁護士費用を支払う必要があり、不動産鑑定を行った場合の費用は当事者で等分することになります。
共有物分割請求においての相談先と費用の相場
共有物分割請求においての相談先はいくつかあります。専門家に依頼するケースだと、「弁護士」、「税理士」、「司法書士」にそれぞれ分かれます。
専門家それぞれで対応できる分野が異なりますので、自身が抱えている悩みと照らし合わせて依頼先を考えてみるとよいでしょう。
弁護士へ相談
こんな人におすすめ
- 共有者同士で争いに発展しそうな場合
- 誰に相談すれば良いか分からない場合
費用 | 着手金20万円程度+獲得金額の5%程度 |
共有者の間での協議がまとまらない場合はまずは弁護士に相談しましょう。弁護業務以外にも他業種と連携してワンストップでの解決が期待出来ます。
税理士へ相談
こんな人におすすめ
所得税の申告を専門家に依頼したい場合
費用 | 10~20万円程度 |
共有物を分割する場合は原則として譲渡所得の課税が生じます。課税の仕組みを知りたい場合や確定申告の代理を希望する場合は税理士へ依頼すると良いでしょう。
司法書士へ相談
こんな人におすすめ
共有物の名義変更を依頼したい場合
費用 | 5~10万円程度 |
分割協議がスムーズに進み共有物の名義変更だけをしたい場合、司法書士への依頼が良いでしょう。不動産の名義変更は他の専門家で対応することはできません。
共有物分割請求で弁護士に依頼をする場合の費用の相場
相談料 | 5,000円~1万円/1時間程度 |
着手金 | 20〜30万円程度 |
報酬金 | 獲得金額の5%程度 |
共有物分割請求で弁護士に依頼をする場合、分割する資産の価値によって弁護士費用は大きく上下します。
相談料・着手金・報奨金以外にも、弁護士を現地に呼んだ際の日当や、収入印紙代や各種手数料などの諸々の実費も弁護士費用として発生します。
法律相談など依頼をする前段階で具体的にどのような費用が発生するかを弁護士側とよく確認をしておきましょう。
獲得金額 | 報酬金 |
---|---|
時価1000万円の土地を2名で分割 1000万÷2=500万円 | 500万×5%=25万円 |
時価900万円の土地を3名で分割 900万÷3=300万円 | 300万×5%=15万円 |
弁護士なしで共有物分割請求をすることはできる?
共有者はいつでも共有物分割請求権を行使できるため、弁護士を雇わなくとも共有物分割請求をすることが出来ます。
共有者全員での協議がスムーズに進めば必ずしも弁護士を雇わずとも共有物分割問題の解決可能で、当事者以外を交えた協議の手段として調停も存在します。
共有物分割請求で弁護士に依頼するメリットとデメリット
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共有物分割請求で弁護士に依頼するメリット
当事者間の感情的対立を避けられる
共有物分割請求においては親族などとも協議を行う必要があり、感情的になって話し合いが進まない場合も少なくありません。弁護士が間に入ることで、法律に則って公平な話し合いをサポートしてくれるため共有者との関係悪化を防ぐことが期待できます。
共有物分割請求をスムーズに進行できる
共有物分割請求においては当事者間での協議以外にも、共有物の評価額の算定や各種法的書類の作成、当事者間で解決できない場合は調停や裁判など様々な法的知識や手続きが必要になります。弁護士であればそれらを全てサポートしてもらうことが可能で、スムーズな問題解決が望めます。
共有物分割請求で弁護士に依頼するデメリット
弁護士費用が発生する
当然ですが弁護士に実際に業務を依頼した場合は弁護士費用が発生します。費用は分割する共有物の評価額によって上下しますが、数十万単位なので決して安いとは言えません。共有者同士の関係が良好で話し合いがスムーズに行われている場合は弁護士に依頼せずに済む場合もあります。
自身の望まない判決が出る可能性がある
最終的に裁判までもつれた場合、自身の望まない形での共有物分割の判決が出る可能性があります。そもそも裁判による決着を望んでいない場合は、弁護士以外に税理士や司法書士へ依頼することで費用を抑えられる可能性があります。
共有物分割請求で弁護士に依頼をする場合の流れ
まずは共有者全員で共有物分割協議を行います。
実際に裁判になると時間的にも費用的にも負担が大きいうえ、当事者間の人間関係が悪化してしまうことも珍しくありません。
また最終的に訴訟へと発展していくとしても、そもそも「協議が不調に終わった」ということが証明されないと訴訟は起こすことが出来ないので注意が必要です。
共有物分割協議においては家族など近しい人物だけではなく疎遠な親族など面識のない人物とも交渉を行わなければならない場合などもあります。
当事者だけでの共有物分割協議がうまくまとまらない場合は弁護士に相談してみましょう。
弁護士が間に入ることで法律に則ったスムーズな交渉が出来たり、裁判以外の様々な解決策を提示してくれたりと、トラブル解決の可能性が高まります。
協議がまとまらなかった場合は裁判所に対して共有物分割請求訴訟を申し立てることになります。
なお共有物分割請求訴訟に関しては、共有者での協議を行っている場合は必ずしも調停を行う必要はありません。
申し立てに際しては各種書類の他に印紙代や切手代など3~5万円程度の費用がかかります。
最終的に判決がくだされるまでには半年~2年ほど期間がかかります。
共有状態の解消方法は裁判所が判断をするため、必ずしも原告側の望む結果になるとは限りません。
そのため実際に判決が下される前に和解をするケースも珍しくありません。
共有物分割請求についてよくある質問
共有物分割請求をしてからかかる期間は?
共有物分割請求をするとまずは共有者全員で協議をすることになり、この話し合いが上手く進めば半年~1年ほどで解決する場合が多いです。ですが相続問題なども絡み状況が複雑化し訴訟まで発展した場合は解決まで2年ほどかかる場合もあります。
共有物分割請求で拒否された場合は?
共有物分割請求を拒否することは出来ません。そのため、相手が分割請求に応じない場合は調停または訴訟により強制的に共有状態の解消を目指すことになります。
まとめ:共有物分割請求とは | 弁護士に依頼する場合の費用と流れ
この記事のまとめはこちらです。
- 共有物分割請求とは、不動産などの共有している資産を単独者の所有物とするために分割するための請求のことで、分割には「現物分割」「代金分割(=換価分割)」「価格賠償」の3パターン存在する。
- 共有物分割請求の際に弁護士に依頼すると、共有者との協議以外に法的な対応も全てサポートしてもらうことが可能で、スムーズな問題解決が望めます。
- 共有物分割請求自体は弁護士を雇わなくとも可能ですが、不動産の登記変更や税金の問題なども対応する必要があります。これらも含めて弁護士に依頼した場合、分割する資産の価値によっては弁護士費用は数十万円~100万円を超える場合もあります。
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