離婚において親権を決めることは、大きな決断の一つです。中には、夫婦それぞれがどうしても親権を獲得したいケースなどもあります。
このページでは、離婚における親権の決め方について紹介しています。加えて、そもそも親権とはどのような権利なのか、男性と女性ではどちらが有利なのか、弁護士に依頼すると有利に働くのかなども紹介しています。
離婚における親権の決め方
親権について
大まかな説明だと、「親権」は子どもに対して親が持つ責任というイメージがありますが、詳細に説明すると親権は、「財産管理権」、「身上監護権」の二つがあります。
「財産管理権」、「身上監護権」それぞれどのような権利であるか下記で紹介しています。
財産管理権
子の財産の管理
子どもの生活などに関わる財産を親が代理して管理する責任があります。
財産に関する法律行為についてその子を代表する
子どもの財産に関する法律行為があった場合は、親が子どもの代理する責任があります。
身上監護権
身分行為の代理権
婚姻、離婚、養子縁組などの発生や変更などの身分行為を子どもの代理で行う権利。
居所指定権
子どもの居所を指定できる権利。子どもは親権者の指定した場所に住まなければなりません。
懲戒権(削除)
親が子どもに対して懲戒・しつけなどをする権利。2022年12月10日に削除されています。
職業許可権
子ども職業を営むにあたって親が許可する権利。子どもは親の許可が必要です。
離婚における親権の決め方
夫婦間の話し合い
基本的には、夫婦間の話し合いで決めます。片方の親が親権を持つことを認め、もう一方もその親権を認めれば成立します。例年、87%前後が母親が親権を持つ形となります。
離婚調停で決める
調停委員が当事者の間に入るという形で進行します。あくまでも話し合いでの解決です。第三者の意見も交えながらの話し合いになるため、冷静に交渉を進めることができます。
離婚裁判で決める
離婚調停で決まらない場合に訴訟を起こし裁判が行われます。離婚裁判のためには、離婚調停を行なっている必要があります。裁判結果に対して、従わなければなりません。
離婚における親権では、男性と女性どちらが有利
基本的に、離婚における親権では、女性の方が有利に働きやすいです。離婚の親権は、これまでのデータに基づくとほとんどは母親が得ている傾向にあります。
子どもが二人以上の場合は、父親と母親が親権をそれぞれ分けるケースもあります。
子どもが一人の場合
年 | 離婚件数 | 親権(夫) | 親権(妻) |
---|---|---|---|
2016 | 58029 | 13% | 87% |
2017 | 57166 | 12.8% | 87.2% |
2018 | 55682 | 13% | 87% |
2019 | 55251 | 13.2% | 86.8% |
2020 | 51406 | 13.1% | 86.9% |
子どもが二人の場合
年 | 親権(夫) | 親権(妻) | その他 |
---|---|---|---|
2016 | 11.3% | 83.6% | 5.2% |
2017 | 11.3% | 83.7% | 5% |
2018 | 11.5% | 83.5% | 5% |
2019 | 11.1% | 83.8% | 5.1% |
2020 | 11% | 84% | 5% |
親権者を考慮する上で考慮するポイント
父母の事情 | 監護への意欲や監護に対する将来の能力、生活環境などが考慮される |
子の事情 | 子どもの年齢や意欲、心身の状態、兄弟姉妹との関係、環境変化による影響、親子の情緒的結びつきなどが考慮される |
継続性の原則 | これまで子どもを監護した者を親権者として優先する |
子の意思 | 子どもの意思が明らかな場合に考慮される |
兄弟姉妹不分離の原則 | 兄弟姉妹がいる場合は、できる限り離れ離れにならないようにする |
離婚における親権で母親の方が有利になりやすい理由
離婚における親権については、主に上記で説明した「財産管理権」、「身上監護権」を果たすことができるかどうかを基準に決めますが、母親の方に有利に働きやすい理由を紹介します。
監護時間が取りやすいため
父親はフルタイムで働き仕事中心の生活になりやすいケースが一般的です。そのため、監護のための時間が取りにくいと考えられています。母親の方が、子どもと一緒にいる時間を長くしやすいと考えられています。
継続性の原則の観点から
多くの家庭では、子どもの監護は母親が中心に行なっているケースが多いです。そのため、監護の継続性の観点から母親が選ばれやすいです。また、子どもの意思として母親が選ばれやすい傾向もあるようです。
「判例法主義」の観点から
もし、裁判に発展した場合、日本の裁判は「判例法主義」によって過去の判例が判決の大きな要素になります。過去の判例では、母親が親権を獲得しているケースが多いため、母親の方が有利に働きやすいです。
離婚における親権で母親が負けるケースとは
母親が虐待、もしくは育児放棄している
母親が子どもに対して叩く、蹴るなど身体的暴力を振るっていたり、暴言や無視などの精神的暴力している場合。他にも食事の準備をしない、不衛生な環境のまま放置など育児放棄している場合などは親権を争った場合に母親が負けるケースがあります。
母親が精神疾患を患い育児ができない
母親がうつなどの精神疾患を患っており、正常に育児ができないと判断される場合は、母親が親権を獲得できない場合があります。ただし、母親の精神疾患を患っている場合でも、最低限の育児ができる場合は、母親が親権を獲得するケースもあります。
子どもが父親を選んでいる
「転校したくない」、「父親と一緒に暮らしたい」など子どもが父親を選んでいる場合は、母親が親権を獲得できない場合があります。但し、継続性の原則など、これまでに監護していた者が母親の場合は、子どもの意思だけで決まらないケースもあります。
普段の育児を父親に任せている
食事や送り迎えなど普段の育児のほとんどを父親がしている場合は、継続性の原則から母親は親権を獲得できない場合があります。他にも、別居していて父親の家で子どもが生活している場合なども父親が親権を獲得しやすいです。
親権決めについて弁護士に依頼すると有利に働くのか
親権決めの際には、弁護士へ依頼した方が有利に働きやすいです。いくつかの要素を元に親権者を決めますが、弁護士に依頼することで不足した知識を補いながらスムーズに進めることができます。
親権決めの際に「アドバイスがもらえる」、「調停や裁判に発展した場合にスムーズに進められる」などがメリットとして挙げられるでしょう。
親権獲得のためのアドバイスをもらえる
親権獲得のための要素は一つだけではないため、もし夫婦間で親権を争った際には、自分に有利な状態であるのか否か分からなくなることもあるでしょう。そのような場合に、弁護士からアドバイスをもらうことができるので、有利に交渉を進めやすくなります。
調停や裁判に発展した場合にスムーズ
お互いに親権を獲得したい場合は、調停や裁判に発展するケースもあります。調停や裁判に発展したときに弁護士に依頼することが一般的ですが、最初の段階で弁護士に依頼すると情報を把握した上で弁護士も動くことができるのでスムーズに動き出し有利に働きます。
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離婚における親権を決める場合の手続きの流れ
離婚する際のほとんどは、協議による離婚です。ですが、その前に不安な場合は、「弁護士への依頼」、「離婚届不受理申出」などを行なっておくとよいでしょう。
弁護士に依頼すると
専門家から詳しい知識を得ながら話し合いを進めることができるので、有利に進行しやすい。
離婚届不受理申出をすると
勝手に「親権者欄」を埋められて離婚届を提出されるリスクを防げる。離婚届が一度受理されてしまうと、偽造の場合でも調停や訴訟を行わなければならない。
基本的には、当事者同士で話し合い、親権者がどちらであるか決めます。協議で決まった場合には、離婚届用紙の親権欄のところを埋め、夫婦それぞれ押印し役所を提出します。
離婚協議で親権者を決めることができない場合は、離婚調停で親権者を決める流れになります。
離婚調停とは
調停委員が夫婦間の間に入り、意見を調整します。夫婦間で親権の対立や意見の相違がある場合は、調査官による調査が行われます。以下のような調査があります。
- 親権者の決定について、子どもの意見
- 家庭訪問や学校などに訪問し、子どもの監護や生活についての現状
- 夫婦それぞれの経済状況や心身の状況を確認
調停が成立した場合は、家庭裁判所から調停証書が送付されます。「調停成立してから10日以内」に離婚届を持って役所へ提出します。
離婚調停で親権者が決まらない場合は、離婚裁判によって親権者を決めます。親権者が決まらない場合、離婚もできません。
離婚裁判と離婚調停の違い
離婚調停では、調停委員が入りますが、あくまで話し合いで親権者を決めます。そのため、納得いく結果ではない場合に不服申し立てができます。離婚裁判になると、裁判官が提出資料や調査内容をもとに判決を下します。裁判で決まった判決に対しては、異議申し立てすることはできません。
まとめ:離婚裁判で弁護士費用がない場合 | お金がない人は頼めるのか?
この記事のまとめはこちらです。
- 親権には「財産管理権」、「身上監護権」がある。親権において対立がある場合は、これらを基準に決めます。
- 親権を決める際は、「夫婦間の話し合い」で進め、決まらなかったら「調停」、「裁判」の順で行われます。
- 親権を決める際に弁護士へ依頼すると、より詳細な知識を得ることができて、有利に交渉が進められます。
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