このページでは、従業員が会社に損害を与えた場合に賠償金を請求できるのかについて紹介しています。事例も併せて紹介しています。
また、「従業員が損害賠償請求に対して支払い能力がない場合のケース」や「実際に従業員が会社に損害を与えている場合の対処法」についても触れています。
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従業員が会社に損害を与えた場合に賠償金は請求できる?
結論として、従業員が会社に損害を与えた場合に賠償金を請求することは可能です。主に「重大な過失による損害」、「不正や故意による損害」に対して損害賠償を請求することができます。
一方で従業員が会社に損害を与えたとしても、それが通常起こりうる業務上のミスによるもの(軽微な過失)、会社の管理体制の不備なども関連している場合は損害賠償を請求することができないケースとして考えられます。
従業員が会社に損害を与えた場合に「損害賠償を請求できるケース」として、主に下記のようなものがあります。
- 重大な過失による損害
- 社用車の利用による損害(飲酒運転・居眠り運転など)
- 安全管理や危険物取扱による損害(マニュアルの不履行や安全設備の点検を怠ることなど)
- 管理上による損害(顧客情報の流出など)
- 不正や故意による損害
- 背任行為
- 横領行為
- 計画的な顧客の引き抜き
- 機密情報漏洩
- 故意による機械の破損
従業員が会社に損害を与えた場合に「損害賠償を請求できないケース」として、主に下記のようなものがあります。
- 軽微な過失による損害
- メールの誤送信
- 発注ミスや予約ミス
- 故意ではなく、備品を破損させてしまう
- 会社の教育体制・管理体制にも過失がある場合
- マニュアルや教育が不足している
- 個人の能力を超えた業務の強制
- 不可抗力による損害
- 自然災害による損害など
会社が従業員に対して損害賠償を全額請求できる条件
上記で紹介したような、従業員の過失による損害に対して請求する場合も全額請求できるケースは限定的となっています。ケースの多くは全額請求ではなく、減額しての請求となります。
基本的に「従業員の過失による損害」においては減額しての請求になるケースが多いです。「故意や不正による損害」においては全額請求することが可能です。
減額される場合は4分の1や2分の1であることが一般的です。
会社が従業員に対して損害賠償を請求した事例
ここでは、会社が従業員に対して損害賠償を請求した事例を二つ紹介しています。
はじめに紹介するのは、従業員の過失によって発生した損害に対する賠償金の請求です。この事例もですが、過失による損害に対しては、ほとんどのケースが全額ではなく減額されたものとなっています。
1976年7月8日判決
事案の概要
石油等輸送会社Yに主に小型貨物自動車の運転手として雇用された従業員Xが、入社半年後の昭和45年1月、重油を満載したタンクローリーの運転を臨時的に命じられ、渋滞し始めた国道を走行中、急停止した先行車両に追突した。このため、Yは損害賠償金約40万円を相手に支払う一方、Xにその全額を賠償するよう提訴した。なお、Yは、経費節減のためタンクローリーは対人賠償責任保険にのみ加入し、対物賠償責任保険・車両保険には加入していなかった。また、Xの給料は、45,000円であり、勤務成績は普通以上であった。
裁判所の判断
水戸地裁、東京高裁ともに、自動車による危険な事業活動を行う企業は、事故の発生に備えて任意保険にも加入しておくことは当然であり、また、Xの仕事の内容、勤務態度や給与、事故の態様、Xの過失の内容などからして、YがXに請求できるのは、信義則上、損害額の4分の1が妥当であるとし、最高裁も、この判断は正当であるとした。
参照:https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/90016.html
二つ目に紹介するのは、従業員の不正によって発生した損害に対する賠償金の請求です。不正による損害に対しては、この事例にように全額請求が容認される形となっています。
事案の概要
店長を任せていた従業員が、店舗の電子マネーを不正に利用し、会社に200万円以上の損害が生じた。電子マネーの決済方法は複雑で、正規の利用も含まれていて損害の全容も分からない状態。
解決した方法
電子マネーの発行元に対して弁護士会紹介制度を利用して,電子マネーの利用履歴の開示を求めた。その後、速やかに民事訴訟を提起。
その中では、電子マネーの決済制度を詳細に説明した上で、従業員が行った電子マネーの利用が不法行為に該当すること、その行為によって会社に損害が生じたという因果関係の点について立証を行った。結果、当方の請求の全額が認容されることとなった。
当該従業員は判決で支払いが命じられたにもかかわらず、判決に従わず賠償金を支払ってこなかった。そのため、執行官を連れて従業員の自宅に伺ったところ、本件がその従業員の家族にも知ることとなった。その結果、従業員の家族が賠償金の連帯保証をした上で、賠償金の全額を支払うこととなった。
従業員が損害賠償請求に対して支払い能力がない場合は
従業員が損害賠償請求に対して支払う能力がないとしても、その支払いが免除になることはありません。
基本的に従業員が損害賠償分の支払いができない場合の対処としては、「減額」や「分割払い」の交渉が一般的といえるでしょう。
仮に支払う能力がない従業員が損害賠償請求を無視するようであれば、裁判を起こして強制執行(給与や財産の差し押さえ)という手段が可能となります。
従業員が自己破産をした場合は?
従業員が損害賠償請求に対して支払い能力がなく自己破産をすることについて、その損害が「不法行為によるもの」、「故意または重大な過失により人を傷つけたもの」である場合は免除とはなりません。
基本的には、破産によって損害賠償の支払いを免れるという考え方は、通用しないと考えるとよいでしょう。
破産法 第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
参照:https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
従業員が会社に損害を与えた場合に退職させることはできる?
従業員が会社に損害を与えたとした場合、それが故意や重大な過失、不正によるものであれば退職(解雇)させることができます。
損害が上記以外のものであれば、即座に退職させることは難しいです。就業規則に則って、証拠を集めや警告などのプロセスを踏む必要があります。
従業員が損害を与えている場合の対処法
ここでは、従業員が損害を与えている場合の対処法と、損害賠償を請求する上でそれが適切か判断が難しい場合の相談先について紹介しています。
基本的な企業側の対応としては、「損害に対する賠償金の請求」や「就業規則に則り警告や退職、解雇のプロセスをとること」でしょう。
従業員が与えた損害に対して請求する際の注意点
従業員が会社に損害を与えた場合、それが「重大な過失による損害」、「不正や故意による損害」によるものであれば、その損害に対する請求が可能です。
ただし、上記以外で損害賠償や違約金、給料からの天引きなどという形で対応してしまうと、労働基準監督署や弁護士による調査が行われ、会社側にも責任を求められることとなります。
従業員に対する損害賠償請求に関する相談先
弁護士への相談
従業員へ対して損害賠償を請求することにおいては、弁護士へ相談することが適切な対処と言えるでしょう。法的要件が厳しく、対応を誤ると罰則など企業側の責任も求められることとなるためです。
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従業員への損害賠償に関連した内容で弁護士へ相談する場合の費用
下記は、従業員に損害賠償の請求を弁護士に依頼することを想定しての金額となっています。
- 相談料:1時間あたり5,000~10,000円(無料相談の事務所あり)
- 着手金:10万円~30万円程度
- 成功報酬:獲得金額の10~15%程度
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弁護士費用が払えない場合は
会社と従業員との間にあるトラブルにおいて、弁護士に依頼する場合は相談料・着手金・報酬金を支払います。
しかし、弁護士へ支払う費用は高額になることも多く、一括で用意するのが難しいこともあるでしょう。
ここでは、弁護士費用が払えない場合の対処法を紹介していきます。
分割払いや後払いできる法律事務所の利用
前提として、弁護士に支払う報酬金を無料にすることは難しいですが、分割払いや後払いに対応可能な法律事務所はいくつかあります。
また、依頼する事件内容によって分割払いの対応をしてくれる法律事務所もあるようです。まずは問い合わせだけでもしてみましょう。
弁護士保険に加入しておく
弁護士保険とは、法的トラブルが発生した際の弁護士費用を補償してもらえるものです。
弁護士保険によって補償されるのは主に法律相談料、着手金、報酬金です。(保険会社によって異なることもある)
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弁護士保険に加入すると費用の報酬金が補償される
上記でも少し触れましたが、もし弁護士保険に加入していればトラブルの際の弁護士費用が報酬金含めて補償されます。
補償されるトラブルの範囲も広く代表的なものだと「離婚問題」、「相続問題」、「労働問題」、「交通事故」などによる法的トラブルの際の弁護士費用が補償されます。

現状で弁護士保険の種類はいくつかあり、月額の保険料や補償割合、他にも付帯サービスや特約などがそれぞれ異なります。
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まとめ:従業員が会社に損害を与えた場合に賠償金は請求できる?【事例紹介】
この記事のまとめはこちらです。
- 従業員が会社に損害を与えた場合に賠償金を請求することは可能です。主に「重大な過失による損害」、「不正や故意による損害」に対して損害賠償を請求することができます。
- 従業員から会社に損害を与えられ、損害賠償請求をするケースの多くは全額請求ではなく、減額しての請求となります。
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