近年、身近なトラブルに備える保険として「弁護士保険」の普及が進んでいます。
弁護士保険とは弁護士費用を補償してくれる保険商品で、日本で初めて単独型弁護士保険が登場したのは2013年頃とかなり新しいものの、ヨーロッパでは2000年代時点で既に40%以上の普及率を誇っています。
このページでは弁護士保険のメリット・デメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。
また、実際の弁護士保険のプラン毎の補償割合や、弁護士保険に加入してから保険金を受け取るまでの流れも説明しているため、この記事を読むことで弁護士保険に対する具合的なイメージを持つことが出来ます。
弁護士保険とは
弁護士保険とは、弁護士への相談・依頼にかかる費用を補償してもらうことができる保険商品です。
弁護士費用は「相談料」「着手金」「成功報酬」など多岐にわたり、最終的に数十万円ほどの費用がかかってしまうことも決して珍しくありません。
弁護士保険に加入することで、費用面に対しての不安が解消されるだけでなく、気軽に弁護士に相談ができるためトラブルに迅速で適切に対応できるようになります。
2020年度の法律相談件数は約55万件、2023年の交通事故発生件数は約30万件と、決して法律トラブルは珍しいものというわけではありません。
弁護士保険は必要か
弁護士保険は「もしもの時に備える」ものなので、すべての方に必要な商品というわけではありません。
ですが、トラブルがありふれた現代においてトラブルが起こる可能性や弁護士への依頼にかかる費用のことを考えると、弁護士保険に入っておいて良かったと思えるケースは十分あると言えます。
なお「交通事故にだけしっかり備えたい」という方の場合は、自動車保険の弁護士費用特約を活用するのも一つです。
弁護士保険を利用するメリット・デメリット
弁護士保険を利用するメリット
泣き寝入りを防げる
実際に弁護士を雇うと数十万円の弁護士費用が発生することも珍しくありません。弁護士保険に加入しておくことで「弁護士を雇いたいけどお金がないから諦める」という泣き寝入りを防止することができます。
トラブルの抑止につながる
弁護士費用が安くなる以外にも、保険会社によっては「弁護士への無料相談」「被保険者証カード・ステッカー配布」など様々な付帯サービスがあります。弁護士保険に加入していることが伝わることでトラブルの抑止に繋がります。
弁護士保険を利用するデメリット
待機期間と不担保期間がある
弁護士保険は「加入後すぐに補償範囲の全てのトラブルに対して使用できる」というわけではありません。3ヶ月程度の「待機期間」と1年~3年程度の「不担保期間」という、トラブルが補償範囲であっても保険金が支払われない期間が存在します。
トラブルが全て補償されるわけではない
いかに「弁護士保険」といっても、全ての法律トラブルに対して補償されるというわけではありません。「保険加入前からのトラブル」や「保険契約者の故意または重大な過失による加害行為」などは基本的に補償されません。
弁護士保険の補償について
弁護士保険の補償範囲
弁護士保険は主に「個人向け」と「法人向け」の2種類があり、個人向けの弁護士保険では「自身が経営している会社が取引先から訴えられた」などの法人の法律トラブルを補償範囲外としていることが一般的なため、特に事業経営者の方は注意が必要です。
個人向けの補償範囲
偶発事故
一般事故
他にも様々なトラブルが保険金支払の対象となります。
法人向けの補償範囲
債権回収トラブル
賃貸物件トラブル
従業員の横領
特許侵害
雇用・労務トラブル
情報漏洩
代金の未払い
クレーマー対策
法人向けの弁護士保険はまだ数が少ないものの、事業を行う上で発生する可能性のある民事上の多くのトラブルが補償範囲に含まれます。
弁護士保険の補償割合
弁護士保険ミカタ
法律相談料 | 1件 2.2万円まで ※無料相談サービスあり |
プラン名 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
スタンダードプラン | 80% | 50% |
88プラン | 80% | 80% |
99プラン | 90% | 90% |
ベンナビ弁護士保険
法律相談料 | ✕ ※無料相談サービスあり |
プラン名 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
スタンダードプラン | 50% | 0% |
ライトプラン | 70% | 0% |
プレミアムプラン | 100% | 0% |
男を守る弁護士保険・女を守る弁護士保険
法律相談料 | 1件 10万円まで ※無料相談サービスあり |
着手金 | 報酬金 |
---|---|
100% | 100% |
弁護士保険 事業者のミカタ
法律相談料 | 1件 2.2~12万円まで ※無料相談サービスあり |
プラン名 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
ライトタイプ | 70% | 0% |
スタンダードタイプ | 70% | 0% |
プレミアムタイプ | 70% | 35% |
弁護士保険を使用する上での注意点
弁護士保険が適用されないケースについて
幅広い法律トラブルを補償してくれる弁護士保険ですが、全ての法律トラブルに対して適用されるというわけではありません。
一見すると補償範囲内に思えても、例えば以下のようなケースでは弁護士保険に加入していても保険金が支払われません。
補償されないケースもある
殺人、詐欺、強盗、飲酒運転による交通事故など「保険契約者の故意または重大な過失による加害行為」については弁護士費用の補償は受けられないのが一般的です。
加入前に法的トラブルが発生している
一般的な保険と同様に、弁護士保険も「保険加入時点で直面している、または既に発生しているトラブル」に対しては補償対象外になります。
被保険者が直面していないトラブル
例えば「保険契約者が経営している会社で起きた法人トラブル」などはトラブルの当事者が会社(=法人)となり補償対象外になります。
※ 個人向けの場合
待機期間・不担保期間中にトラブルが発生
トラブルが保険の補償範囲内であったとしても、多くの弁護士保険には「待機期間」「不担保期間」と呼ばれる保険金が支払われない期間が存在します。
弁護士費用が満額支払われないケースについて
実際に弁護士保険の補償対象となり保険金を受け取れる段階になっても、実際にかかった弁護士費用分を保険金として全額受け取れるとは限りません。
保険会社によっては補償される金額の割合がそもそも100%ではなかったり、契約者が保険金を一部自己負担しなければいけない場合もあります。
補償てん補割合
保険会社の多くは着手金・報酬金の補償てん補割合によって複数のプランを提供しています。
補てん割合が高いほど多くの保険金を受け取れる一方で保険料も高額になります。
免責金額
保険会社が保険金を支払う際に、契約者が自己負担しなければならない金額です。
保険会社によって免責金額に違いがあるので予め確認しておいた方が良いでしょう。
弁護士保険は役に立たない?
弁護士保険はあくまで保険商品のため実際にトラブルが発生しないと価値を感じづらいかもしれませんが、実際にトラブルが発生して弁護士を雇おうと思った際には数十万円単位のお金が必要となってしまうのも事実です。
弁護士保険に加入していれば弁護士費用を大幅に抑えられるうえ、「交通事故」「離婚トラブル」「相続問題」など補償範囲が幅広いのも弁護士保険の特徴なので、自身の備えたいトラブルを弁護士保険が補償しているのであれば、弁護士保険は出費を抑えるうえで非常に有効な手段の一つであると言えます。
弁護士保険の加入方法と使い方
実際に弁護士保険に加入して、そして弁護士保険を利用して保険金を受け取るまでの流れをみてましょう。
複雑な手続き無いものの、いくつかおさえておくべきポイントがあります。
弁護士保険の加入方法
弁護士保険の多くはWeb上で簡単に申し込みをすることができます。
「日本在住で満18歳以上」であれば基本的に加入可能なため、加入条件も厳しくはないと言えます。
申込み完了後に保険会社での審査を通過すると契約成立となります。
注意したいのが、契約完了直後から補償範囲全てのトラブルに対して保険金が支払われるわけではないという点です。
「待機期間」と「不担保期間」という、トラブルの種類によって一定の間保険金支払いがされない期間が存在します。
契約が成立した月の月末などに第1回目の保険料の支払いが行われ、「第1回目の保険料の支払いが正しく行われた月の翌月1日」が責任開始日(=補償が開始される日)」とされる場合が多いです。
補償が開始されるのは「申し込みを行った日」でも「第1回目の保険料を支払った日」でも無いという点には注意が必要です。
弁護士保険の使い方(保険金の請求方法)
トラブルが発生した場合、まずはご自身の加入している弁護士保険を利用して弁護士へ初動対応の相談をしましょう。保険会社と提携している弁護士を紹介され無料で相談できる場合が多いです。
適切な初動対応を行うことでトラブルの被害を最小限に抑えられたり、その後の話し合いを有利に進められたりする可能性が高まります。
実際に問題が解決したあと、弁護士から保険会社に実際にかかった弁護士費用の見積もりを提出し、保険会社での審査を経たのち保険金が弁護士または契約者に支払われます。
弁護士費用のどの程度の割合が支払われるかは契約している保険会社や保険プランによって変わってくるため、契約時に必ず確認をしましょう。
まとめ:弁護士保険とは | 利用するメリット・デメリットを紹介
この記事のまとめはこちらです。
- 弁護士保険とは弁護士費用を補償してくれる保険商品で、加入することで費用面に対しての不安が解消されるだけでなく、気軽に弁護士に相談ができるためトラブルに迅速で適切に対応できるようになる。
- 弁護士保険の補償範囲は広いものの全ての法的トラブルを補償しているわけではなく、「待機期間」「不担保期間」といったトラブルが補償範囲内でも保険金が支払われない期間がある点も注意すべき。
- 弁護士保険は多くの法的トラブルを補償してくれる一方で、保険金が支払われないケースもいくつか存在するため、自身のニーズや状況に保険の内容が合っているか確認して加入した方が良い。
弁護士への相談を検討している場合は、弁護士保険の加入がおすすめです。下記から、弁護士保険の比較することができます。